セラミックスプロセスチェーン最適化を目指した構造形成過程のリアルタイム3次元OCT観察法による理解とその制御因子の科学的解明

光コヒーレンストモグラフィーを用いたセラミックスプロセス中の構造形成過程のリアルタイム3次元観察による理解と、粒子界面設計およびマスターシンタリングカーブを基軸として構造形成過程の制御因子の科学的解明を行い、セラミックスプロセスチェーンの最適化を目指します。得られた成果を活用して、具体的なセラミックスとして透明体、配向体、積層体を実現します。本研究は、JST A-STEPステージT産業ニーズ対応タイプ『セラミックスの高機能化と製造プロセス革新』の支援で行われています。

機械的粒子複合化プロセスによるセラミックスの微構造と特性制御

大きさの異なる粒子に機械的に圧密せん断力を作用させることにより、複合粒子を作成することができます。微粒子のハンドリングは難しいですが、複合化することにより扱いがより簡単になります。また、複合粒子とすることで微粒子の均一分散も可能になります。機械的処理により、酸化物、窒化物、炭化物、炭素、樹脂など粒子の種類に依存せず複合粒子を作ることができ、ナノサイズの微粒子を用いればナノ複合粒子を作製することもできます。このような複合粒子を用いることで、セラミックスの微構造の制御ができ、特性向上も可能になります。

先進的粉体プロセスを駆使したセラミックスの高機能化・高信頼性化

我々の研究室には、各種先進的粉体プロセス・解析装置が揃っています。例えば、ナノ粒子の解砕・粉砕・分散に有効なビーズミル、湿式ジェットミルや機械的粒子複合化装置、微小顆粒が作製可能なスプレードライヤー、焼結収縮挙動のその場測定が可能な雰囲気加圧焼成炉、成形体や焼結体の内部構造が観察可能な赤外線顕微鏡などです。これらの装置を複合的に駆使することで、セラミックスの高機能化と高信頼性化を達成するための研究を進めています。また、マスターシンタリングカーブを駆使した焼結収縮挙動の解析と制御など理論的なアプローチも進めています。

表面修飾による機能性ナノ粒子の分散安定化技術

粒子径が数~数10nmのいわゆる機能性ナノ粒子は、そのサイズ、形状、配列状態に依存した特異な電気、磁気、光学的機能を発現することが 知られております。このような機能性ナノ粒子を活用した先進材料が、ポリマーナノコンポジット材料、機能性塗料、センシング材料、 エネルギー関連部材などの多岐分野に応用されており、各材料の機能制御と向上にむけて機能性ナノ粒子の凝集防止と分散安定化技術の構築が 大きな鍵になっています。我々はさまざまな有機溶媒に対応可能な機能性アニオン性界面活性剤(吸着基付近で親水鎖と疎水鎖に分岐した 特異構造を有する)の利用や、交互吸着プロセスを一例とした多段階表面修飾技術を構築することで、様々な機能性ナノ粒子を多くの有機溶媒や樹脂材料に均一分散 させる技術の構築に取り組んでいます。

機能性微粒子の湿式複合化技術

機能性微粒子の界面構造設計に基づいて有機溶媒中における粒子間相互作用を制御することにより、液中で各微粒子の分散性を保ったまま複合粒子を調製する簡便なプロセスの構築に取り組んでいます。右図はこれまでに調製してきた複合粒子の一例であり、無機系材質、有機系材質を問わず、様々な母材微粒子上に機能性ナノ粒子の固定化と分散安定化に成功しています。また、子粒子の表面化学構造に対応した有機系溶媒に複合粒子が安定に分散することも明らかにしています。多成分系スラリー中におけるミクロな領域における構造制御や、母粒子/子粒子の組みあわせから発現する新しい機能性を有する材料開発への貢献を目指しています。

高分子分散剤の簡便な構造設計手法の開発と濃厚系スラリーの分散制御

先進セラミックスは、原料微粒子を分散剤、可塑剤、滑材をはじめとした有機系添加剤とともに溶媒に分散させて濃厚系スラリーを調製した後、 成形・脱脂・焼結の操作を経て最終製品が製造されています。スラリー内における原料微粒子の分散・凝集状態やスラリーの流動特性は、 最終製品の諸特性に大きな影響を及ぼすため、その積極的な制御法の確立が求められています。我々は、カチオン性高分子と・Aニオン性界面活性剤の会合体を用いた高分子系分散剤の簡便な構造設計法にもとづいて、様々な材質(多成分系を含む)と溶媒(水系・非水系)の組み合わせからなる濃厚系スラリーの分散安定化法や流動特性制御法の確立に取り組んでいます。

樹脂鋳型を用いたセラミックスの3次元造形

3次元プリンタを用いた微小構造体の作製が注目されています。我々は、本学、丸尾昭二教授と共同して、3次元造形した樹脂を鋳型とし、これにセラミックスの高分散性高濃度スラリーを用いて成形して、高温で焼成することでセラミックスの3次元微小構造体の作製に成功しています。さらに、セラミックスの複合化を行うための手法を駆使することで、高機能な微小構造体の作製を目指して研究を行っています。また、他の粉体プロセスと融合させることで、ミクロからまくろまで構造制御されたセラミックスの創製についても研究しています。

透明蛍光窒化物セラミックスの開発

白色LEDは省エネルギーな光源として、広く普及しようとしています。現在の白色LEDは、青・紫・紫外線LEDを用い、樹脂に分散された赤や緑に発光するセラミックス蛍光体により、白色光を発光する構造となっています。白色LEDでは、発光するとともに発熱することから、このような白色LEDの寿命は樹脂の熱や光による劣化により低減してしまいます。光源をさらに高出力化するためには、樹脂を使用しない構造とすることが一つの解決策です。我々は、これまでに窒化物セラミックスの焼結研究の一環として、サイアロン焼結体が透明になることを発見しました。この知見を生かして、透明で蛍光性を有する窒化物セラミックスを開発しています。これらは、白色LEDへの適用だけでなく、シンチレーターやレーザーへの応用展開も期待されます。

c軸配向窒化ケイ素セラミックスの開発

SiCパワーデバイスは、自動車やスマートグリッドなどの系統インフラへの応用が期待されています。これを実現するためには、サーマルマネジメントのための周辺部材、特に、絶縁放熱基板の開発が必須です。特に、SiCパワーデバイスでは動作温度が高いことから、大きなくり返し熱応力に起因した破壊を抑制することが課題でした。近年、優れた機械的特性を有する窒化ケイ素セラミックスを放熱基板として用いる試みがなされていますが、従来用いられている窒化アルミニウムセラミックスと比較して熱伝導率が低いことが問題でした。我々は、窒化ケイ素のc軸方向が極めて高い熱伝導率を有していることに着目して、c軸が試料の厚さ方向に揃った窒化ケイ素セラミックスを開発しました。窒化ケイ素のc軸配向には磁場を利用しています。焼結助剤と微構造を制御することで、1900℃、6時間保持という条件で149W/mKという高い熱伝導率を有する材料の開発に成功しています。また、上述の機械的処理によりグラフェンを微粒子に複合化することで、Nd磁石程度の低磁場・静磁場で配向セラミックスを作製することにも成功しています。

軸受用窒化ケイ素セラミックスの開発

機械要素における故障の多くは回転部品、特に軸受で生じます。これを解決するために、現在、高強度、高靱性、高剛性、軽量、低熱膨張、高耐食性、高耐熱性などの特性を有する窒化ケイ素セラミックスを軸受用材料として適用する検討がなされており、すでに、風力発電、自動車、工作機械などに適用されています。我々の研究室では、さらなる機械的高信頼性化と低コスト化を目指して、低コスト原料粉体の利用、ナノ粒子の均一分散、均質成形体作製、焼結挙動の解析と制御などの研究を行っています。

マイクロカンチレバー法によるセラミックスのメソスケール破壊特性評価

セラミックスの強度や破壊靱性は、セラミックスを構成する結晶粒子、粒界、第二相粒子などの寸法や形状・構造とともに、これらの破壊特性、例えば、結晶粒子や粒界の強度や破壊靱性、に大きく依存します。前者の形態学的因子は電子顕微鏡観察などにより測定することができます。しかし、後者の微構造と同程度のスケール(メソスケール)での破壊特性は、これまでに計測する手法がなく、常にブラックボックスとして扱われてきました。これを解決するために、我々は集束イオンビーム(FIB)法により数ミクロンていどのマイクロカンチレバー試験片を作製し、これをナノインデンターで破壊試験をすることによりメソスケール破壊特性を実測する手法を提案してきました。これまでに、窒化ケイ素の粒界、一個粒子、多結晶、ソーダライムガラスなどの破壊靱性や強度の測定に成功しています。この手法は、緻密なセラミックスだけでなく、多孔体、粒子、繊維、厚膜・薄膜、界面、機械的・化学的損傷領域、3Dプリンタなどで作製した微小構造体の機械的特性評価に応用展開可能です。

走査型プローブ顕微鏡によるセラミックスのナノフラクトグラフィー

セラミックスの破面解析(フラクトグラフィー)は、セラミックスの破壊の本質解明と機械的高信頼性化のための微構造制御に有効な手法です。我々は、これまでに走査型プローブ顕微鏡によるナノスケールのフラクトグラフィー(ナノフラクトグラフィー)を提案し、各種セラミックスに適用してきました。また、走査型プローブ顕微鏡は、表面近傍の物性(磁性、圧電性、強誘電性、導電性など)を評価することができます。我々は、ナノスケールでの形態と物性の同時計測による破面解析(ハイブリッドナノフラクトグラフィー)を行い、Mn-Znフェライト、BaTiO3、PMN-PTなどの機能性セラミックスに対して適用しています。さらに、超小型材料試験機を走査型プローブ顕微鏡内に設置し、セラミックスの破壊挙動のその場測定も行っています。